2008年05月26日

盲目のピアニスト辻井伸行

先日、あるテレビ番組の特集で、すごいピアニストの存在を知りました。その名は、辻井伸行さんです。年齢は今年で22歳。彼は目が見えないというハンデイをものともせず、健常者以上の迫力と高度なテクニックで魂を込めた演奏に、私は思わず引きずりこまれました。
 
彼は小学生の頃から「天才ピアニスト」と言われていました。生まれつき全盲で、ハイハイさえも他の子どもたちよりも遅かったそうです。そんな彼が母親がいつも口ずさんでいた「ジングルベル」の曲を、おもちゃのピアノで奏でたというのです。これが2歳の時のことでした。この才能を母親は見抜き、ピアノを練習させました。曲はすべて耳で覚え、その感覚を指に伝えました。
盲目であるがゆえに、研ぎ澄まされた聴覚が、音符には出すことのできない彼独自の感性を紡いできたのだと思います。


首を振りながらひたすら鍵盤をたたいている彼の演奏は、テンポは速めで流れるような演奏です。曲はベートーベンの「月光」「熱情」でしたが、テンポにメリハリがあり、小さな彼の体からは信じられないような音量でした。それはまさに彼自身の人生を奏でているようで同じベートーベンの「運命」と重ねられるものがありました。これを「辻井ワールド」と言うのだと思います。


彼の演奏は彼を見ながら聞くのではなく、彼と同じように目を閉じて聞けばすごさがいっそう伝わってきます。それだけに彼に似合うのは重い曲と思っていたのですが、アンコールに演奏した彼自身の作曲した「川のささやき」はキラキラときらめく軽やかな舞うような音色で私のすさんだ心を癒すに十分な曲でした。


テレビを見た翌日、私はさっそく彼のCDを買い求めました。今、毎日朝の目覚めは辻井伸行さんの「川のささやき」です。 


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