2009年04月20日

すがすがしい東西高校対決

今年のセンバツ高校野球には実にすがすがしい気持ちにさせられました。決勝戦は新進気鋭の花巻東高校(岩手)と県立の清峰高校(長崎)の東西対決。


 清峰の投手は冷静沈着な今村君、花巻東は豪腕で派手なガッツポーズを見せる菊池君。対称的な投手の投げ合いは、1対0の僅差で清峰高校に凱歌があがりましたが、手に汗握る熱戦でテレビ画面にくぎ付けになってしまいました。

 
 花巻東高校は、敗れたものの、実にさわやかなチームでした。佐々木監督は、部員には常々「野球のうまいロボットをつくっているわけではない。野球もできる立派な人間をつくるのが指導する上での信念。選手たちには、『6時間の授業のあと、野球の練習が7、8時間目の授業のつもりでやりなさい』と話しているといいます。

 
 決勝戦前はたいてい球場の室内練習場で15分ぐらい練習でき、報道陣はここで試合前の選手の取材ができます。花巻東高校の控えの野球部員は、ドアを手で押さえ、ネットを持ち上げて報道陣が入りやすいようにしました。これは、ほんの小さなことかも知れませんが、ベンチ入りできなかった控えの選手は、自分は今何をなすべきか考えて、それを行動に表しているのです。しかもこれは監督の指示ではないというのだから驚きです。


 花巻東高のベンチは、声が途切れることなく、拍手も沸きあがる。練習試合で対戦した駒大苫小牧の甲子園で優勝経験ある香田監督も、「あまえら、あのチームの雰囲気をまねろ」と言い、花巻東高は必ず甲子園にいくと予言したそうです。


 暗いムード、負のオーラをベンチに持ち込まないのが大事。だから、花巻東高では、打者がアウトになってベンチに戻る際にもハイタッチで迎えます。
終わったことは仕方がない。拍手によって気持ちを切り替えよう。アウトになっても雰囲気を下げず、逆に上げていこう。それが相手にもプレッシャーを与えることにつながると部員はいいます。
「盛り上がっていくぞ!」これは彼らの合言葉です。


 一方清峰高校は、人口1万3千人の長崎県北松浦郡佐々町にある小さな町の生徒数580人の小さな県立高校。野球部員全員が県内の出身者であるということが価値あるものだと思います。この地区は長崎県の中でも最も過疎化が進んでおり、いうなればひなびた地域。そのチームが、全国の強豪を次々と打ち倒しその頂点に立ったのです。地域の人々にとっても大きな励みになったに違いありません。


 チーム躍進の原動力の一つは吉田監督の指導法。吉田監督は、選手目線に立ち、選手の意見を取り入れながら、選手の個々の特徴を伸ばすような指導法をとりました。この点ではWBCの原監督に通じるものがあります。


 試合中はどしっと構えて落ち着いているため、選手も浮き足立つことなく、強豪と対戦しても物おじすることはありませんでした。だから選手に必要なここ一番のミラクルエネルギーが出せたのです。強豪と対戦する時も、選手は「強豪に勝てば名前が知られる」と前向きに試合に臨んだのです。
選手がだれしも「勝ちたい」と願っている中にあって頂点をきわめるということは並大抵の努力ではなかったと思います。


 清峰高校は、3年前のセンバツでは決勝戦に進出したものの、横浜高校に0対15と大敗し、これは決勝戦のワースト記録となりました、この時に受けた大きな傷を癒すには十分の今回のセンバツ優勝でした。
金融不況など暗いニュースの多いこのさ中、両チームには「感動をありがとう」と言いたいです。
やっぱり高校野球は最高です。

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