2011年02月01日

アジアカップ日本Vによせて

いやー、凄まじい試合だった。でも勝ってよかった。アジアカップの決勝戦、深夜にもかかわらずテレビにくぎ付けになってしまった。
 

 激闘の韓国戦準決勝から中3日、しまった顔がピッチに見られた。この試合、特に日本チームには、ベンチ、控え選手が一体となった「和」があった。終盤オーストラリアの怒涛の攻撃をチーム全員で体を張ってよく防ぎきった。
「柔よく豪を制す」とはこのことか。
 

 試合開始からオーストラリアは、はるかに勝る体格で高いボールを上げロングボールで攻め日本は押されっぱなしだった。ここでザッケローニ監督は、FWを下げDFを投入する策に出る。これにより左サイドの長友選手が押しあがり、守備が安定する一方、攻撃にも幅ができた。でも長友選手の運動量はすごい。何と彼はこの試合で15.19q走りに走り続けたという。彼に「疲れ」の2文字はないのだろうか。このポジションチェンジにより日本チームはより機能的に動くようになった。
 

 それにしてもザッケローニ監督の采配は見事だった。圧巻であったのは延長戦でフル代表で実績のない李選手を使ったこと。彼は見事期待に応えて決勝ゴールを奪った。韓国が母国の李選手は07年日本人として帰化し日本のナショナルチームの一員となった。起用に際し、「俺がヒーローになる」と心に誓ってピッチに立った。そして、あの見事なまでに美しいボレーシュート。
 

 監督の役割は選手のいいところを引き出すところにある。選手の特性を見抜いて、いい場面で選手を使う。辛抱強く選手を使う一方、ここぞと見極めた時に、それに適した選手を起用する。適材適所でなく、「適時」に選手を起用する。それにしても選手起用は見事にはまった。出てくる選手すべてが起用に応えた。アジアカップでは23人の登録選手の21人までがピッチに立った。
 

本田選手に「お前が決めるか?」と言わしめたように、エースストラーカーもいるが、ゴールを決める脇役もいる。成長しているなーと実感した平均年齢24.5歳の若い日本チームだった。
 
ザッケローニ監督は、選手時代にさしたる実績もないのに、イタリアのセリエAの監督まで経験し、チームを優勝に導いている。日本の監督候補としては下位にランクされ、上位候補者が次々と固辞したこともあり、回りまわってのオファーを受けたという。何か運命的なものを感じる。


 彼は監督に就くと、選手とのコミュニケーションを大事にし、控えの選手までレギュラーと同じように声をかけて回った。そして、何より日本文化を理解しようと努めた。
勝利の瞬間、選手が次々とザッケローニ監督のもとに走りより、抱き合った。それが何より監督と選手の信頼の絆の深さをよく表していた。


 優勝インタビューで「我々は11人でプレーしなかった。荷物持ちもそれ以外のすべてのスタッフも戦った。これは全員で勝ち取った勝利だ。」と語るザッケローニ監督。まさに総力戦だった。ブレない姿勢とすばやい判断。苦しい試合を重ねた分、喜びもひとしおだったろう。


 18年前のドーハの『悲劇の地』は、『歓喜の地』に変わった。

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