デンマークのフレデリック王子の被災地訪問
デンマークと言えば、あの「糸まきまき」の民謡でよく知られ、人口は540万人、面積も九州とほぼ同等。畜産を基幹産業とし、オモチャメーカーのレゴでよく知られるヨーロッパの小国である。
この国からフレデリック王子が被災地にやってきた。それも国で義援金を募り、それを直接もってきたというのだから驚きだ。デンマークからの義援金はこれまであわせて2億円にのぼるという。
アメリカは米国民に福島第二原発から80キロ圏外退避勧告を出し、韓国は自国で学校を臨時休校にする緊急措置をとった。海外では、原発事故が、大きく取り上げられ、それはまるで日本全体が放射能に汚染されたような誤解を生み、外国人観光客がめっきり減ってしまった。被災地から遠く離れた関西、九州でさえそうであった。
そんな中でのフレデリック王子の東松島市への慰問は、全世界に「安心と安全」アピールする大きな意義があった。フレデリック王子は来日に際し、大勢のヨーロッパのメデイアを引き連れてきた。そのメデイアが、子供たちと給食を共にし、サッカーに興じ、松島を観光するフレデリック王子を大々的に報道した。この発想はまさに「民の発想」。世界最古のデンマーク王室は、国民から幅広い支持を得ているのもうなずける。
フレデリック王子は型破りの人物で、大学では普通の学生と同じように学び、コンサート・映画・スポーツ観戦など庶民的な生活を満喫した。また、海軍の潜水部隊に入隊し、特別扱いされることもなく、厳しい訓練に耐える心身の強さを示した。フルマラソンやグリーンランドでの犬ぞり探検に参加するなど破天荒な王子だ。
結婚にまつわる話も興味深い。シドニーオリンピック観戦にお忍びでオーストラリアを訪れた王子はカフェで偶然知り合った現地の一般女性と恋におち、やがて結ばれた。それが今のメアリー皇太子妃である。
デンマークはまた、環境先進国として知られ、国内発電の16%は風力発電で、風力発電機は洋上も含めると5000基を超えている。
それまで日本と同じように海外の石油資源に99%依存していたデンマークは、石油危機後、輸入石油資源への依存を減らし、特に風力・バイオマスの利用に力を入れ、再生可能エネルギー技術に飛躍的な進歩を遂げた。いまやデンマークはEUでエネルギー自給率100%を超えている唯一の国になってぃる。日本こそこの国のエネルギー政策を見習うべきではないか。デンマークは小国であるがゆえにエネルギー改革を断行できたのかもしれないが、日本も福島第二原発事故を教訓に、エネルギー改革を推し進めることが急務だ。
フレデリック王子は「欧州では日本旅行は危ないという見方が 広がっているが、危険ではないと示したかった。遊覧船から見た松島の自然は素晴らしく、 東北地方にとって観光が重要だとよく分かった」と語り、また、福島第一原発の事故で関心が高まる自然エネルギーについて、「再生可能エネルギーのノウハウについて日本と協力する用意がある」と述べ、デンマークが推進する風力発電などでの技術協力に意欲を示した。
身をもって両国の架け橋となったフレデリック王子に心から感謝し、デンマークからの発信を深く心に刻んでおきたい。