力強い宣誓と味気ない決勝戦
今年のセンバツ大会は、石巻工業の主将の力強く、それでいて温みのあった歴史に残る選手宣誓で始まった。
宣誓
東日本震災から1年。日本は復興の真っ最中です。被災された方々の中で、苦しくて心の整理のつかない方、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず悲しみに暮れている方々がたくさんいます。
人は誰でも答えのない悲しみを受け入れることは苦しくて辛いことです。しかし、日本が一つになり、この困難を乗り越えられることができれば、その先に大きな幸せが待っていると信じています。
だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔。見せましょう日本の底力、絆を。われわれ高校球児にできること。それは全力で戦い抜き、最後まであきらめないことです。
今、野球ができることに感謝し、全身全霊で正々堂々プレーすることを誓います。
この言葉通り、石巻工業高校は九州大会の優勝チーム神村学園相手に一時は4点の差をひっくり返す底力を見せた。試合には負けたものの、センバツに選ばれるに値する見事な戦いぶりだった。
「打てたのは、何か見えない力が、後押ししてくれたおかげです」逆転打を打った3番の阿部君は涙ながらにインタビューに答えた。
「子どもたちは一度ボロボロになり、そこから立ち上がろうとしている石巻を見て毎日過ごしている。実力は32校中32番目かもしれませんが、何か特別な力があるはずです」と松本監督。
「あきらめない町・石巻」「その力に俺たちはなる!」アルプススタンドの横断幕の言葉をそのまま地でいった石巻工業高校野球部だった。
しかし、決勝戦は少々白けてしまった。青森の光星学院のベンチ入りのメンバーの18人中14人までもが大阪はじめ県外の選手で占められ、東北出身者はわずか4名だけであった。また、大阪の桐蔭高校も、県外からのいわゆる“野球留学生”で組まれたチームだ。おらが街の〜高校といった郷土色などまるでない。寄せ集められたエリート軍団のチームの対戦にすぎなかった。
これに対し、兵庫の洲本高校は、県立高校であり、全員が淡路島出身、文字通り「島の代表」だ。かつてはさわやかイレブンと言われた徳島の池田高校、尾藤監督に率いられた和歌山の箕島高校。これらはすべて公立高校である。池田高校は部員わずか11人でも準優勝した。今では不可能に近いことだ。
高野連はもっと規制をすべきだ。甲子園で優勝することは究極の目標であることには間違いないが、勝つことに執着したセミプロ化した選手の試合ほどつまらないものはない。
高校野球はもう高校野球でなくなっている。野球留学生は、大阪・兵庫・神奈川などの中学校の野球熱の盛んなところの選手で、地元の強豪校に入れなかった選手や、高校に行っても地元ではベンチ入りさえできない選手が甲子園に出場するために野球留学することが多い。あのダルビッシュにしても楽天の田中投手にしても然りである。
あの石巻工業のような純粋なホンモノの高校野球を見たい。それが私の願いである。