ある牛丼店で
「いらっしゃいませ!」今日も心地よい声が店内に響いている。心のこもった声勢はおもてなしの心。いつしか私は週に2度は職場の近くの牛丼店に行くことなってしまった。
この全国チェーンの牛丼店の牛丼は味が濃いのと量が多いので正直言って、商売敵のY屋の方が私の舌には合っていた。
しかし、バイパスを降りたすぐに店がある便利さも手伝って牛丼・カレーと交互に食べることにしていた。その際は、野菜サラダセットも注文していたが、最近は夏負けしまいと、はりこんでうな丼や特うな丼を頼むことも多い。
今では、この店の牛丼の味に慣れたというか、慣らされてしまった。でも、大きな収穫があった。年の頃は35前後だろうか、なんとも心地よい声とおもてなしの心で私を迎えてくれる女性がいた。
あれは7月7日の七夕の日、店に入って昼食を食べる時間がなく、その日に限ってドライブスルーで注文をした。応対したのがその女性、私は店で一番高いであろう「特うな丼」を頼んだ。私は、受け渡し口で現金を請求されたので1200円を支払った。しかし、なかなか「特うな丼」は来なかった。その間、イラチの私には妙に感じられた。少し待ってようやく待望の「特うな丼」が手渡された。私はその時「遅いじゃないか」と一言。店員「今、昼時でお客様が多いため、申し訳ありません。」「ありがとう」私は心のこもっていない声で、店を後にした。
そして、今日の話である。今日もはりこんで「特うな丼」とサラダセットを頼み、レジで勘定をしようとしたら、レジにはあの女性店員。「この間の7月7日、申し訳ありませんでした。」と言い、その後「あのう、塾長さんをされているんですか?」と言葉を続けた。
「なんで、わかるんですか?」「この間、いらした時塾生さんとご両親が、いつもお世話になっていますと挨拶されていましたから」
私は二度驚いた。7月7日のこと。私が何者かを知っていたこと。そして、3度目の驚きがあった。「また、お世話になることがあるかもしれませんから」多分、自分の子どものことを言っているんだろう。
私は何か得したように感じ、その店を後にした。私の背後には「ありがとうございました」何とも心地よい声が響いた。
「特うな丼」と『女性店員』が夏バテ気味の私を元気づけてくれた。