藤井聡太八段の勢い止まらず
藤井聡太棋聖が4連勝で王位を獲得し、二冠になった。
対戦の後、喜びは控え目に「4連勝という結果は望外。実力以上の結果が出たのかなという気はします。」将棋盤上での孤独な戦いのあとの、対戦相手に気を配るこの細やかさ。 これが高校3年生が発する言葉だろうか。
私が驚かされたのは、「封じ手」の飛車切りだった。これを機に形勢は一気に加速したように思えた。
AIの申し子と言われ、将棋研究に余念のない彼だが、この手はAIも想像しえなかった一手だったという。このような思いもしないような大技に小技も織り交ぜ、まさに完璧な勝利だった。
一方のタイトル防衛を逃した木村一基九段は、王位に就くまで、7度目の挑戦にして、やっとタイトルをつかんだ。遅咲きの王位だった。中年の星と言われ、受けにはめっぽう強く「千駄ヶ谷の受け師」と言われていた。
「百折不撓」(何度挫折してもくじけない)を座右の銘とし、これを貫いてきた。
「ストレート負けは恥ずかしい限りで申し訳ない。準備はしてきたつもりでしたが、結果には結び付きませんでした。また一から出直します」という言葉に無念さがにじみ出ていた。
この無念さを糧として、木村一基九段もさらに精進されることと思う。私も「百折不撓」を新たな座右の銘にしよう。
藤井聡太の強さの根幹は、いったいどこにあるのだろう。それは終盤に相手の玉将の逃げ場を無くす能力の高さにあると思う。
彼は詰将棋を得意としている。詰将棋は、ある局面に駒を配置して王手の連続で相手の玉を詰める高等なパズルだ。小学6年の時、プロ棋士やアマ強豪が参加する詰将棋解答選手権で優勝し、それも現在5連覇中だ。小学生が優勝することに「とても現実とは思えない」。
それにしても、底知れない強さが際立った王位戦だった。
まだまだ道半ば。さらなる高みに向かって、どこまでも駆け上がって下さい。師匠の杉本八段の言葉に彼への大きな期待がうかがえる。
若き天才のさらなる飛躍を期待したい。