中島みゆきに魅せられて
私は昨年末不覚にも深夜ベッドから落ち、腰椎を骨折して2週間余り入院することになった。
入院なんてするもんではありません。救急車で運ばれたため、こちらで病院を指定することもできず、運ばれた病院は評判のあまり良くないとある病院。
個室に入ったものの、入口のドアを閉めることは許されず、他の病室とはカーテンで仕切られているだけという個室とは名ばかりの病室。食事はまずく、9時消灯。ほんと一日が長く感じられた。
そこでこのもて余した時間をどう過ごそうかと考えた時、YouTubeという便利なものを見つけた。これはいい。朗読で好きな作家の作品を聞いたり、音楽も聞くことができる。中島敦や山本一力を聞きまくり、中島みゆきの曲もじっくり聞くことができた。
これまで逆境にあり、窮地に立たされた時、中島みゆきの曲と歌声にどれだけ支えられ、エネルギーをもらったことだろう。
そして、どれだけ自分の心の弱さに活を入れてもらったことだろう。
彼女の歌は挫折を重ねれば重ねるほどほど心にしみわたる。
挫折すると本当にわかる。この歌は自分への人生への応援歌なんだなと。
特に“宙船(そらふね)”は仲間に裏切られた時、今は苦しくても、この歌聴いて、出来るかぎり、前を向いて歩いてゆこうと思うようになったから不思議だ。
その船をこいで行け お前の手で漕いで行け
お前が消えて喜ぶ者に お前のオールを任せるな。
彼女の曲や歌声は素晴らしいが、詞はただ単なる作詞ではなく、すぐれた文学だと言える。
今は“銀の龍の背に乗って”をよくカラオケで歌う。
失うものさえ失ってなお
人はまだ誰かの指にすがる
柔らかな皮膚しかない理由は人が人の傷みを聴くためだ
急げ悲しみ 翼に変われ 急げ傷跡 羅針盤になれ
まだ飛べない雛たちみたいに 僕はこの非力を嘆いている
人は他者からもらった推進力を助走にして飛び立ち、ゆくゆくは自分の力で飛べる龍になり、いずれ誰かを背に乗せて飛び立たさせてあげられるような立派な銀の龍に自分もなろうとする。
今では、毎晩寝る前にこの曲を聴いている。今日も無事に1日が終わった事に感謝しながら。
出来る事なら過去の自分と倒れるまで対峙してのり越えたい。 自分に勝ちたい。そんな勇気がふつふつと湧いてくる。
中島みゆきの心に刺さる歌・詞・そして歌声。歌うたびに気持ちが高ぶる。中島みゆきは本当に不思議な力を持っている歌い手だ。
自分の人生のエンディングには是非この曲を流してもらいたいものだ。