阿部詩選手敗れる
パリ五輪柔道女子52キロ級で2回戦敗退した阿部詩選手。畳を降りても会場に響き渡るほど泣き叫ぶ姿が痛々しかった。私は阿部詩選手の大ファンだが、あの姿を見たくなかったし、見せてほしくはなかった。
阿部詩選手には五輪二連覇の期待がかかり、相当なプレッシャーもあっただろうし、かなり激しく、苦しい練習に打ち込んできたことだろう。
でも、柔道は、日本発祥のスポーツであり、唯一のオリンピック種目だ。男女の違いはあるにせよ、これに打ち込む選手を私たちは「柔道家」と呼ぶ。他にそんなスポーツは他にあるだろうか。
勝負だから勝ち負けはもちろんある。負けた悔しさもわかる。でも勝っても負けても「礼節を重んじ」て取り乱さないというか、毅然とした冷静な態度をとってほしかった。それが勝者に対するリスペクトにもなる。
負けて泣くこともあるだろう。でも観衆の前でのあの大泣きはいかがなものか。人を感動させる涙もあれば、人をひかせる涙もある。
優勝した兄の一二三選手は、決勝戦が終わった後、正座をして試合場に深々と頭を下げた。これこそ「柔道家」の姿ではないだろうか。
武士道に打ち込むを武士の姿を見たような気がした。
これだから日本の柔道は『世界の柔道』になったのだ。
阿部詩選手には負けて更に強い人間として大きく成長してほしい。