祖母の死から‥『Dear,Grandma』
昨年の5月9日に僕は祖母を亡くしました。僕の家は母子家庭で幼い頃からよく祖父母に面倒を見てもらっていました。授業参観なども母が仕事でこられない時は祖母が代わりに来てくれていました。とてもやさしく、でも怒る時はしっかりと怒ってくれる僕にとっては自慢の祖母でした。
そんな祖母が一昨年の秋ごろ、体調が崩れ祖父が病院に連れて行きました。そこでの診断結果が「血管肉腫」という今までに聞いたことが無い病名でした。ネットで検索してみるとペットなどの動物に多い病気のようで血管にできるガンだと言うことがわかりました。しかも祖母のそれは、一番近い病名で言うとそうなるだけで、前例が50件ほどしかないとても珍しい病気とのことでした。年の暮れに手術をして悪性の部分を摘出し、正月は自宅で過ごしました。
その手術からわずか1ヶ月足らずでまた痛みが出たようで病院に連れていくと、摘出したはずの腫瘍は元の大きさの倍になっていました。しかも大動脈の近くにあるようで摘出は困難だと言われました。
それから祖母は闘病生活に入り、平成19年5月9日午前9時15分、祖母は母と妹にみとられながら静かに息をひきとりました。享年76歳でした。
僕は小学・中学生時代、やんちゃをしては怒られ、祖母によく反抗していました。高校からはオーストラリアに留学したため、年に1,2度しか会えなくなりました。一人遠く離れて、ようやく家族の大切さに気がつきました。人は自分ひとりでは生きられない、支えてくれる友達や家族がいるからこそ生きていけることを学びました。
この塾に就職して、これからいろいろと恩返しをしていこうと思っていた矢先の出来事でした。「なんでまだ元気やったときにもっと色々してあげられんかったんやろ。なんでもっとお見舞いに行ってそばにおってあげんかったんやろ。」ととても後悔しました。
あれから8ヶ月、悲しみも少しずつ癒え、いつもどおりの生活に戻りつつありましたが、僕の心の中ではまだ何か引っかかっている感じがありました。そんなときに友達に教えてもらった『九州男(くすお)』という長崎出身のグループの『Dear,Grandma』という歌を聴きました。天国にいるおばあちゃんにあてた歌詞は僕の心を強く打ちました。
『言いたかったけど言えなかった。もしもこの声が聞こえるのなら、どうか、もう心配しないで。』
いつも僕たち孫の心配ばかりしていた祖母に対する僕の今の気持ちがそのまま歌われている気がして自然に涙が流れました。
思春期の頃は親や祖父母がうっとうしく思ってしまう時期があります。でもその親や祖父母がいなければ今の自分は存在しません。家族の愛情の中で育ったことは、これからのあなたにとって、とても大きな宝物となります。いつかは別れの時がやってきます。それは誰にも変えられない事実です。だからこそ、その時に後悔無く、心から『ありがとう』といって送れるように、これからを過ごしていってください。